考え事

思ったことを書きます。

浅野いにお『零落』が持つ空虚感

 ソラニンおやすみプンプン浅野いにおさんの漫画の虜になった。ネットでは雰囲気マンガなどと言われているが、その雰囲気がまた読ませる力を持っているのだからすごい。
 さて、今回は新装版のソラニンと同時に発売された零落を読んで思ったことを書いていきたいと思う。あくまで自分の感想であり、個人的な意見なのであまり大きく耳を傾けすぎませぬよう。

 『零落』はタイトル通り落ちぶれた漫画家に焦点が合わせられた作品である。8年間の長期連載を終えた主人公「深澤」が次作を描き始めることができずどんどんと停滞していき、やがて「ちふゆ」という風俗嬢と出会うというのが本作のメインストーリー。終始鬱屈とした息苦しい展開が続くこの漫画だが、多少(もしくはもっと多く)作者である浅野いにお氏の自伝的要素が入っているようだ。どこまでが現実でどこまでが虚構なのか、我々に判別する術はないが…。

 ネタバレになってしまうので詳しく書くつもりはないが、これほどまでに息苦しい泥沼をかき分けて進んでいくような漫画を自分は知らない。リアルであり嘘であるこの漫画はきっと評価が大きく割れるに違いない。主人公の行動に共感できる読者もけっして大多数ではないだろう。
 しかし、だからこそリアルなのだと思う。一個人が抱える重苦しい悩みを読者に託す。それがこの漫画の持つ「空虚感」なのだろう。